風呂。 黒田
「あー…これはまた派手に…。」
と医者に言われてから、
自分の利き腕はそれなりの処置をされガーゼを貼られ
ぐるぐると白い包帯で巻かれてしまった。
そんでもって、三角巾で腕を吊るされた。
そのおかげで埃塗れなロイは、一人で風呂に入れなくなった。
傷の疼きと伴って苛々が増していった。
「何ていう不幸だ、これでは女性にも会えないではないか。」
と軽い溜め息と一緒に漏れた呟きを隣で
ロイの車の運転をしているハボックは聞き取った。
「はいはい、今日の所は俺で我慢して下さいね。」
最後の部分を強調して毒吐いた。
何ていう恋人だろう、とハボックも心の中で呟いた。
もちろん、声に出したらなんと言われるか解らないので。
「…そうだ、ハボック、私を風呂に入れろ。」
思い立ったように言った。
「はぁ、いいんですか?」
恋人と二人で一緒に風呂。
と、言ったら
アレしかないだろう。
と思った矢先。
「勿論、何かしようとしたら…解ってるな、ハボック?」
「…はぁ、やっぱり。
でも、傷に悪いですよ。」
「解ってる、しかし、このままで居るより断然マシだ。」
「…はぁ。」
少しでも期待した自分が馬鹿だった。
そうして、ロイとハボックは一緒に風呂に入る事になった。
***
あまり力の入らない利き腕も使いシャツの釦を外していく。
「…手伝いますけど?」
あまりにも不器用に外していくものだから、声を掛けた。
「あぁ、頼む。」
こんなに情けない事を部下にやらせるのに、
どうしてこんなに偉そうなのか。
まぁ、このヒトらしいけど。
シャツの下はTシャツだったので、裾を掴んで脇辺りまで持ち上げた。
「はい、大佐、バンザーイ。」
「…ばか、子供扱いするな!」
「だって、他に思い当たらなかったから。」
「『腕を上げろ』とかあるだろう!」
「はいはい。」
軽く流されて、結局”バンザイ”の格好をするハメになった。
もうここまで来てかなり御立腹だった。
「さてと、全部脱いだら入って来て下さい。
湯張っときますから。」
そう言ってハボックは浴室へ入っていった。
後は片手でもどうにかなるので何とか脱いでハボックの後に続いた。
「じゃあ、そこに座って下さい。髪の毛先に洗っちゃいますから。」
バスタブに座らされて髪に湯を注がれていく。
「ちゃんと腕上げてて下さいね、濡れちゃいますから。」
ゆったりと優しい手つきで髪を撫でるように洗われていく。
こういう風に何気なく優しくされると
弱くなる。
こんな風に優しく誰かに髪を洗われる事など、
もういつの事だったろうか。
遠い記憶を思い出している内に
すっかりシャワーのお湯で泡を洗い流されていた。
「体は自分で洗う。」
スポンジを持って構えていたハボックから
それを奪い取り、体に付けて洗い始めた。
その様子をじっと見るものだから、睨み付けてやった。
「あんまり見るな。」
「いーじゃないっスか、何度も見てるんだし?」
「…うるさい。お前もさっさと洗え。」
もう一つの色違いのスポンジを投げて遣すと
それを受け取った彼は笑いながらポンプからソープを出してそれに付けた。
その様子をつい見てしまった。
逞しい腕、胸。
軍人らしい、体。
自分の白い肌とは違い、男らしい肌の色。
それを、どれくらいの女が求めているのか
知っているのか、知らないのか。
何となく、知らない女達に嫉妬してしまう。
「…何スか、じろじろ見ちゃって。」
「どうだ、じっと見られる気分は。」
咄嗟に目を離して不機嫌そうに言う。
「別に悪か無いですね、
相手があんたなら。」
にやりと笑って頬に軽くキスをされた。
何だか嫌な気分では無かったけど、顔を背けて洗うことに専念した。
さっぱりと泡も流して湯に浸かろうとした時、ロイは呟いた。
「二人で入ったら狭いだろうが。」
確かに、このユニットバスは一人用なので
増してや男二人となると、かなりきつい。
「じゃあ、こうするしかないんじゃないっスか?」
と言いながらハボックは自らを足を伸ばして浸かった。
そして、指で『ココ』と指す。
「そこに私も寝そべろと…。」
「じゃなきゃ狭いですよ。
まさか、ここまで奉仕させた部下を放り出すなんて言いませんよね、
大佐?」
「…。」
仕方なく溜め息を吐きながら自分も湯に浸かった。
ロイの体重が水圧で軽減されて自分にかかる。
「…何か、凄い”いちゃいちゃ”してません、これ?」
「…燃やすぞ。」
「御冗談。」
軽く笑って、彼の手首を持つ。
「俺が持ってますから、力抜いちゃっていいですよ。」
濡れまいと立たせていた腕が疲れるだろうと思っての配慮。
それに甘えてロイが力を抜いたのが解った。
「あぁ…こんな傷作っちゃって…。」
今日の巡回中に偶々出くわした強盗に立ち向かった所、
飼い主の物を盗られたのだろうか、
勇敢にも向かった一匹の犬が切られそうになり
反応して庇ってしまった。
その犬の毛色は…。
「昔…少しだけ遊んだ事のある金色の…。」
「金色の?」
「あぁ、いや、なんでもない。
何にせよ、負傷した者はいないのだから良いに越した事はないだろう?」
「そうですけど…。」
その続きを塞ぎ込んだのはロイの唇で。
「…傷ついた私を甘やかす。その為にお前がいるのだろう?」
全くこのヒトは。
仕返しとばかりにキスで返した。
シャンプーの匂いと白く覆う湯気の中で。
言い訳。
ひゃー;
何とも中途半端…;
私はもう一度原作を読み直した方がいいです。
ロイがどんどんと乙女化されて…!
ヒェー;すみませんすみません;
黒田 (旧:神崎 楓)
2004.3.5
(移動:04.10.31)
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