(*「涙の理由」→「哀」→「接触」の続きです。捏造ありまくりです。*)
かけひき。 黒田
「…ロイ、昼飯食いに行こう。」
あれから数日、ヒューズは何度も食事に行こうと誘う。
その度に、断っていた。
こんなに執拗に誘うという事はヒューズはもう気付いている。
ロイが見る見るうちに痩せていっている事に。
もう何日もまともな食事をしていない。
胃が受けつけず、水分と軽い物しか入らなかった。
だが、今回ばかりは断る訳にはいきそうにもない。
「…あぁ。」
漸く、頷いたロイの腕をヒューズは嬉しそうに引っ張った。
「よし!俺のオススメの店に連れて行ってやろう!」
ヒューズの舌は中々肥えていて、
彼が美味しいと言った物に不味い物は無かった。
だから、今の胃が受け付けてくれるような食事が在りそうな気がした。
そうして自分を取り持って、大人しくヒューズに付いて行った。
***
午後13時。
ハボックは、中央の大きな門まで来ていた。
色々な手続きを済ませて、大佐に会いに行かなければならない。
まず、会ったら何を話す、とか、どうやって話を切り替える、だとか。
散々考えた。
何だかんだ言って、やっぱり未練はある。
そりゃ、たっぷりと。
そして、最後の最後に切り札も考えた。
切り札という、賭けを。
諦めの悪い男ってのは、嫌われるだろうが
そうも言ってられない。
諦められないから、こんなに苦しいんだ。
一度、深く息を吸って『さぁ、行こう』と決めた時だった。
あの、艶やかな黒髪が見えたのは。
***
「あれ、マスタング大佐とヒューズ中佐、今からお昼ですか?」
と、敬礼をしながら言ったのは、ブロッシュだった。
書類を抱えていたので、数枚落ちそうになりながらの敬礼だった。
「あぁ、俺のお気に入りんトコ☆!」
恥ずかしいくらいハイテンションなヒューズを横目にロイは軽く笑んだ。
その様子を見て、少し安心した。
ブロッシュも、あの日以来何度かロイを見たが
日に日に痩せていく様で心配をしていたのだ。
これなら平気だろう、と思い二人を見送った。
「いってらっしゃいませ!」
ヒューズは軽く手を振って応じて、ロイは目線で応じた。
二人が自分から目線を外したのを確認してから
自分も逆方向に歩き出した。
書類を早く運ばなければならないので自然と足並みが速くなった。
その後ろで、彼らが少しした所で立ち止まったとは気付かずに。
目線が合ったのは、すぐで。
それから、外したくても外せずに。
「あ、ハボック少尉、中央までどうした?」
ヒューズの言葉でやっと、外す事が出来た。
驚いた気持ちと頭を何とか整理して、もう一度向き直った。
彼を伺うと、たいして変わった様子は無く、動揺も無い。
…するはずが、無い。
「はぁ、仕事です。」
少ししか経っていないのに、懐かしく感じる彼の声。
自分も何か言わなければならないのに何も出てこない。
「ははっ、そりゃ、そうだよなぁ。」
少ししか経って無いのに、彼が懐かしく感じた。
艶やかな黒髪は、変わっていなくて
同じ黒髪を何度探してもやっぱり違くて…。
他は…怖くて目が向けられない。
会ったらまず何を話すとか、全て飛んだ。
…賭ける…事しか。
「大佐、俺、結婚するコトになりました。」
どこまで引けば食らい付く。
お願いだから、もう…。
怖くて向けられなかった目を、もう一度合わせた。
色が変わったのが解った。
そして、
その目が”閉じられた”のが解った。
あぁ、終わったなぁ…。
「…あぁ、そうか。」
それから、言葉が続かなかった。
何か祝いの言葉など、言わなければならないのに。
「…けほっ…。」
何より先に咳が出て、押さえた手に何か温かい物が付いたのが分かった。
胃もきつく痛んだ。
それより、もっと痛んだのは…心だった。
「…それじゃ、俺、手続きがあるんで。」
そのまま固まったように、口を押さえた手を離せずにいるロイに
敬礼をして通り過ぎて行った。
…これで、終わったなぁ…
「…ロイ…?」
近くにいたはずのヒューズの声が遠くで聞こえたような気がした。
***
ブロッシュは来た道を引き返していた。
今日の朝、聞いた情報があったからだ。
『東方から、マスタング大佐の手伝いに人が来るという話、
やっぱり言った方がいいよなぁ。』
何せ、この前の件があるから。
自分と比べるなんて、失礼かもしれないけれど
もし、自分だったら教えてもらった方がいい。
心の準備とか出来るし。
それにしても、誰が来るんだろう。
ぼんやり考えている間に前方から見覚えのある人が
こちらに向かって来るのが見えた。
あ…ハボック少尉だ、と言う事は、この人が手伝いに。
「ハボック少尉、お久し振りです。」
何か少しでも情報を集めようかと思って声を掛けた。
「…あ、どうも。」
どういう訳だが、彼は凄く沈んでいて心此処に在らずな感じだった。
「あの、今回はどういった用件で中央…」
ブロッシュの言葉が止まった。
ハボックの方に向いている視線の中で
人間が倒れるのが見えた。
驚いて目を凝らすと、隣にはヒューズが見えた。
という事は、倒れたのは
ロイ。
ハボックに何か言ってそこに向かうべきだったが
それより先に走った。
のだが、自分の隣を何かが通り過ぎた。
「ロイ!?」
ヒューズが何度も呼びながら何事かと様子を伺う。
まさか、狙撃か!?こんな所で!
と、辺りが騒然となる中で何者かの腕が見えた。
「…ハボック…少尉!」
ロイを守るように覆い被さり、周りを見渡した。
周囲が各々の武器を構えて神経を研ぎ澄ます。
覆い被さったハボックの視界に赤が混じる。
それは、ロイの掌。
出血がどこなのか、など考えられずに抱え上げて走った。
久々に抱き上げた彼は、とても軽くて
その命までもが
軽くなって
消えてしまうのではないかと、
震えが止まらなかった。
言い訳。
すみません…!まだ続いております…!
次で完結の予定です…。
もう少しお付き合い下さいませ…!
というか、捏造の嵐過ぎて本当にスミマセン…。
ロイがダメな子過ぎて…あぁ…。
黒田 (旧:神崎 楓)
2004.9.27
(移動:04.10.31)
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