*パラレル。生徒ハボック×先生ロイです。*
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18歳のハボック
   ×
28歳のロイ。
         黒田








昨日家で予習した授業でも眠らず真剣に受けているのは
あの可愛い先生のせいだ。

凛々しく黒板の前に立ち、教科書を片手に淡々と説明する。
黒い髪に白衣が映えてるし、白い肌も浮き彫りになる。

女子は勿論こんな美形な先生には惚れ惚れしている。
男であの先生に惚れてるのは俺を含めても数少ないだろう。
(というか、いるのか?)
だって、先生は男だし、学校の女性は殆ど落ちてるし。
彼女を先生に盗られた!(勿論、先生はそんなつもりは無い)
と嘆く男が大半で。
ともかく、俺は、あの先生に惚れている。

化学科教師、ロイ・マスタング先生に。

だから、俺は今日も化学室に行く。





「先生?ちょっと、いいっスか?」
軽いノックと共に声を掛ける。
もう何度も続けられた動作だが、勝手に入るなんて事はしない。
先生は、結構そういう所を気にする人だから。
「あぁ、ハボックか?いいぞ。」
「失礼しまーす。」
行儀良く、扉を静かに開けて中へ入る。
廊下とは違い温かい空気に冷えた体が緩む。
「あったかー…。」
つい漏れた声に、先生は小さく笑った。
「そうか、教室はまだだったな、ストーブ。」
「そうっスよ、凄ェ寒いんですから!」
「ははっ、まぁ、お前達は若いんだから仕方ないな。」
「先生だって、十分若いじゃないですか〜。」
笑いながら足元に積み上げられた本を拾い、元ある場所へと戻す。
いつの間にかこの部屋に来るとやる事になった習慣。
『問題を教えてやるから、そこ片付けろ』
熱心に問題を聞きに来た生徒に向かって言った言葉である。
ハボックは、面倒くさそうにやりながらも
こうして二人でいられる時間が嬉しかったので文句も言わずに片付ける。
本の種類は様々で、やはり系統は化学だった。
膨大な本棚に一冊一冊片付けて、終わる頃になると
コーヒーの匂いが漂ってくるのだった。
「ほら、今日はもうそれでいいから飲め。」
「はーい。」
丸椅子を引っ張って先生の方へ向かう。
机の上に並べられた二つのカップの片方を持ち温かさを楽しむ。
「…んで?どこが解らないんだ?」
ハボックが持ってきた教科書を開いてペンを取り出す。
「んー、あぁ、これこれ。」
温まった指で別に解らない筈でも無い問題を指す。
「これはだな、」
そこにペンで文字が加えられる。
長い指で綴られる文字は、薄くなだらかだった。
「…ハボック、聞いてるのか?」
「あぁ、はい、聞いてますよ。」
こうしてぼんやりと彼を見ている為に
予習をしているなんて言ったら怒るだろうな。
でも、この瞬間が一番好きで。


もっと、先生が知りたい。

もっと、先生に触れたい。

もっと、先生の声が聞きたい。

もっと、先生を愛したい。




「…ハボック?」
ふと気付いた時、自分は先生の手を握り締めていた。
ずっと、触りたかった先生の長い指に。
もうこの瞬間、何かが切れて決心してしまった。


「…先生、俺」
「ハボック、帰るぞー?」
「あー、やっぱりここにいたんだね、ハボック先輩。」

漫画みたいなタイミングで扉を勢い良く開けたのは
エドワードとアルフォンス。
元気で仲の良い兄弟。



「「………。」」



固まる空気。
ハボックの気持ちを知る兄弟は明るい表情のまま、さっと血の気が引いた。


ヤバイだろ、この雰囲気は。


「あー…と、俺ら、もう帰っからさぁ、なぁ、アル?」
「そ、そうなんだよね、兄さん。ハボック先輩、僕達はこれで…」
「お前たち、ちょっと待て。」
踵を返して出て行こうとする背中を呼び止めたのはロイだった。
体が揺れる程驚いた兄弟は振り返りたくなかったが
ゆっくりと振り返った。
その顔は青白い。

「ハボックも連れて行け。」



…うわ、決定打。



青白いのが深緑のようななんとも奇妙な色へと変わった。
心の中で何度もハボックへと詫びを入れた。
もう、遅いけど。
ハボックはゆらりと立ち上がり二人の方へ向かっていく。
もう、丸っきり生気の抜けた顔で。
「じゃ、先生、さよーならー!」
そんなハボックの両腕を兄弟は捕まえて足早に去った。
こんなハボックが可哀相で。







中途半端な時間で、誰も昇降口には居らず、足音は3人分だけだ。

「…ハボック、その、ごめんな?」
「…ごめんなさい。」

エドワードとアルフォンスは気まずそうに切り出した。
自分達が故意では無くても、しでかしてしまったのだし。
ハボックが、どんなにあの先生に焦がれていたのも知っていた。
男同士がキモチワルイ、とか普通は思うだろうけど、
ハボックのは純粋でキモチワルイ、なんて思わなかった。
だから、二人は応援していたのに、なのに、この始末。
そりゃ、落ち込む。

「…いや、別に、エド達のせいとかじゃねェし…。」

そうは言ったものの、落ち込みは酷くなる。
確かに、エドワード達のせいでは無い。
先生も男だし、男を受け止めるなんて普通考えられない。
むしろ、入って来てくれて余計な事を言わずに済んだのではないか。

…余計な、事。





先生は、やっぱり迷惑だったろうな。







深く溜め息を吐いて、それからその事しか頭に無くなって
どう家に着いたとか覚えて無かった。




***





一人、化学室に残るロイは帰る支度をしていた。
自前のノートパソコンと書類、
後は忘れ物は無いかと机を見回すと向かいの机にそれはあった。
「…あの、ばか。教科書忘れてる。
 これじゃあ、いつもの予習出来ないだろうに。」
どうしたものか、と持ち上げる。



『…先生、俺』



持った指先が急に熱くなって、思わず教科書を落とした。

今、何を思った…?

熱くなった指先を握り締める。

私は、教師だ。
それに…私は、もう…。

鞄の横にある携帯を見つめて溜め息を吐く。
「…ヒューズ、私はもう寂しくなってしまったのかな…?」
鳴らない携帯に小さく呟いた。








***








挨拶が飛び交う、登校。
空は綺麗に晴れたが風は冷たい。
ハボックは、重い足を引き摺るように歩いていた。
休んだら休んだで、担任であるロイに直接電話されてしまう。
それに、あの兄弟も自分達のせいだ、と気に病んでしまうだろう。
女々し過ぎる自分に嫌気が差して、また溜め息を吐く。
暗い空気の繰り返しをしていたら、後ろから声を掛けられた。

「ハボック!」

振り返ると兄弟が少し気まずい表情で近寄ってきた。
「あぁ、おはよ、二人とも。」
朝からそんな顔をさせちゃ、やっぱり悪いので明るい声で返した。
すると、向こうも少し気が緩んだようだ。
他愛も無い話をしながら校舎に近付く。

「…。」

ぴたりと足が止まった。
毎日の日課になっていた、この場所から見上げるあの部屋。
大抵はカーテンが閉められていて中を見る事は出来ないけれど。
今日も引かれるように見上げた。


「…あ。」


そこは、窓が全開になっていて人が外を覗いていた。
間違いない、ロイ先生。
先生は自分が気が付いたのを見て、何かをヒラヒラさせた。
それは、教科書だった。

俺の…!

「ごめん、エド、アル!先行っててくれ!」
「あ、ちょっ…ハボック?!」
「どこ行くんですかー!?」
アルの問い掛けにも答える暇無く走った。
教科書が大事でじゃなく、先生のあの表情に驚いた。
笑ってた。
嘲笑うとかではなく、自然に。
怒ってたり、軽蔑してたりしてないんだ、と思うと嬉しかった。













冷たい風が吹き込む窓を閉めて、扉の方を向いた。
彼が来るまで、約8分。
どう話をして、どう伝えようか、もう一度頭の中を巡らせた。
何度も何度も考えて、出した結果。
良かれ悪かれ、もう逃げないと思った。



早く、おいで。




私は、ずっと待ってるよ。














言い訳。

す、すみませ…!
中途半端で終わってみました…でなく、終わってしまいました…。
夢で見たという、黒田の妄想の産物。
漫画って、イイタイミングで邪魔が入ったりするんですよね。
そんな夢を見た…。

ロイちゃん、また恋愛に臆病になってます…。
そして、いつも引き金はヒューズ…。
それを開放するのがハボック。
わあぁぁ、ワンパターンですみません…。
これに続きとか作ろうか悩んでます…。(止めておけ)



黒田


2004.12.219






















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