色気。 黒田
深く青い軍服を翻して歩く様は何とも凛々しく美しい。
背筋を伸ばし、短く切られた黒い髪も優雅に靡く。
軍服に包まれ隠れているが、細身であり四肢も長く、胸も豊満である。
顔も綺麗に整っており、中性的で男女共に振り返ってしまう。
彼女の名前は、ロイ・マスタング。
勝手に付けられた名は
『鋼鉄の処女』
幾多の男が彼女をモノにしようと試みたのだが、叶った事が無い。
という事から付けられた。
親友であるマース・ヒューズでさえも
そう呼ぶくらいだから真実味はある。
そんな彼女が最近急に綺麗になった。
今までも十分綺麗なのだが、それを越え”綺麗”になった。
その原因と思われるものがある。
それは、彼女の左側に常に付いている部下。
金髪に碧眼、背が高く、それでいてヘビースモーカー。
ジャン・ハボック、彼女の恋人。
ロイの数十人目の恋人だと噂されているが、
本当は、彼が初めてなのだ。
表面だけでなく、体、心までも全てを委ねたのは。
付き合い始めて半年は過ぎただろう今、ロイの色気が急激に増した。
「恋ってのは、人を変えるんだなぁ、ロイ?」
「…急に何だ、お前は。」
二歳になったばかりの娘の写真を手に現れたヒューズは
いつものように散々娘の話をしていたかと思うと急に話題を変えた。
「最近、お前は有名だぞ〜?」
「女のクセに生意気で有名なのは知っているが?」
「ちっげーよ!」
ずい、と指をロイに指した。
「お前、最近色っぽい。」
「………は?」
司令部は皆動きを止めて、ロイとヒューズに視線を向けた。
そんな視線を物ともせず、
ロイに向けた指をゆっくりと下へ運び、襟を捲る。
「原因、みっけた。」
ロイは、はっと気付きヒューズの手を払った。
「…人に指を向けるな。」
顔を真っ赤にしながら襟元を直す仕草は、まさしくアレだろう。
ヒューズは楽しげに唇を歪めて身を乗り出した。
「…『鋼鉄の処女』、じゃなくなったって?」
ロイにしか聞こえないように小さく囁いた。
「な、何だ、それは!」
自分の知らない言葉に慌ててヒューズを睨む。
「男ってのは獣だからなぁ、ちゃんとしてもらってんのか?」
「なっ…!!」
「あいつの凄いだろ?ちっこいお前の事を思うと心配なワケだよ。」
「よっ余計な」
「余計なお世話っスよ、ヒューズ中佐。」
二人の間に腕が下り、ロイの言葉に被った。
「おー、来たねぇ、旦那!」
乗り出した身を引いて、ハボックに向き直る。
ハボックは、あからさまに怒りを表していて、
ヒューズはヒューズで、笑顔の隙間に何か黒いモノを感じる。
それは、一触即発な雰囲気で。
「これ、中佐が頼んでいた書類です、どうぞ。」
「あぁ、ありがとさん。」
書類を受け取る瞬間がまた冷えた空気だった。
「ロイ、綺麗になったなぁ、ハボック少尉?」
「えぇ、そりゃ、ロイ・マスタング大佐は常に綺麗ですよ。」
「若さに任せて無理させたりしてないだろな?」
「満足させてるし、させてもらってるし。
まぁ、それだけじゃ無いっスけどね。」
「ハボック…ッ!」
その話題をどうにかしたくてロイが声を荒げた。
途端に怒りを灯したハボックの目は変わる。
「だって、大佐、俺はあんたを守るのに必死なんスよ?
中佐は義理父さんみたいだし。」
「…ばか!例えヒューズが義理父でも、そんな態度あるか!」
娘を貰いに行くのに、喧嘩を買うような態度だ。
間違いなく失敗するだろう、それは。
怒られて、あるはずも無い尻尾が垂れたように
沈んだハボックの背中をヒューズは軽く叩いた。
「本当、番犬だな、お前は!ロイを大事にすんだぞ!
ロイの祖父さんは厳しいんだからしっかりしろよー!」
笑いながら、書類を振り司令部を出て行った。
嵐のように来て嵐のように去る男は今日も健在で。
しん、となった部屋で紙を擦る音だけがする。
その音を出してるのは、ホークアイだった。
「ハボック少尉、私からも一言いいかしら?」
書類を纏めてロイの机の上に乗せる。
それは、5個目の山積みになった。
「は、はい、何スか?」
緊張した面持ちで伺う。
ロイも周りも、じっとホークアイを見た。
「大佐が不調を訴えて、仕事が捗らないの。
少しは控えて頂けるかしら?」
「「………。」」
まさかホークアイに言われるとは思わず、固まってしまった。
確かに、やっと体を開いてくれたロイが可愛くて、嬉しくて
ここ最近毎晩のように求めてしまっている。
しかし、ロイが不調なのは知らなかったので、ショックを受けた。
縋るようにロイに詰め寄る。
「ご、ごめん…!俺、気付かなくて…!どっか痛い?だるい?」
「い、いや…そんなんじゃなくて…その…睡眠が足らんのだ…。」
いつものサボリ癖が輪に掛けて状態は悪化しているようで
仕事がさっぱりのようだった。
ハボックは、外回りの仕事ばかりで仕事中のロイを知らない。
ロイも、彼の前では多少無理をしていたようだから仕方が無い。
「解ったら、協力して下さいね、ハボック少尉。」
「…はい。」
ヒューズ中佐が義理父だったら、
ホークアイ中尉は義理母だろう、とフュリーは思ったのだった。
言い訳。
はい、やってしまいました。
女の子化。しかも、先天的です。
元から女性だったという設定です。
ど、どれだけの人が付いて来れるのか不安です…(いないよ!)
それにしても、凄い楽しかったです…!
またやっちゃう危険性が…。
教訓:ハボロイはイチャイチャしてればいいのです。
黒田
2004.12.27
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