押し倒す。 2            黒田






日付もとうに変わった頃、最低限の音しか出さずに寝室に入る。
愛しい人の眠りを妨げないよう、静かにベッドに潜った。
相変わらず彼女は背を向けてベッドの隅で眠っている。
少し体を丸めて眠る姿は身を守ろうと身構えているようにも見え、
その度にハボックは心苦しい気持ちになっていた。
体を休める時でさえ、こんなに気を遣わせてしまっては元も子もない。
だから、なるべくベッドでは触れ合わないように
徐々に彼女の家に泊まったり、自分の家に誘うのも控えて、
少しでも長く安心して眠れるよう仕事の時間等を調整したりした。
そう、全ては自分が犯してしまった罪を抱える彼女の為。

『…何にもしないから…
 せめて、触れ合わない距離でもいいから一緒にいたい。』

最近では、それが良い事なのか解らなくなってきていた。
性欲が満たされないだけで、弱る自分が情けなくて色々な事に疲れがみえてきてしまう。
ロイの為だと言いながら、本当は彼女の匂いや温もりを感じると
溜まっていたものが溢れて零れ出してしまいそうで、いつ暴発してしまうかわからないからだった。
解放される”いつか”を辛抱強く待つだけ。
大丈夫、愛しい彼女の為だ。
耐えられる。

耐えられるはず。















『遅くなりそうなので、先に寝ちゃってて下さい。』

そう電話があったのは日付が変わるまで、あと数刻程の夜だった。
程々にしろよ、と言って電話を切り
広い部屋で一人、溜息を吐く。

今日で一月は過ぎた。
彼との行為をしなくなったのは。
増してや肌に触れる事さえ無くなってしまった。
…始めは、あんなに求められていたのに。

大きなベッドに静かに沈む。
『広くていい』と思っていたベッドだが、今では隣に大きな隙間が空いてしまったようで寂しくなる。
柔らかく波打つシーツを指で撫でながら、大きな”空間”に手をやった。
この前までは手を伸ばせばすぐに温かい存在がいて、体だけじゃなくて心も温かかったのに。
最近では、ここに彼がいる事の方が少なくて
昔と同じ冷たさが指に伝わる。


何か、してしまったのだろうか。
嫌われるような、何かを。
それとも…


嫌な想像を止めて、眠る事に専念する。



今は、まだ、気付きたくない。



しん、と静まり返っている寝室に彼が入ってきてから数分、
今日こそは何か話だけでもしたい。
そう思い、静かにゆっくりと振り返った。
表情なんて見えるはずもない。
背を向けられているから。
それを見て声なんて掛けられる筈もなく、頭を元に位置に戻した。
何を動揺しているのか。
ただ、彼が背を向けて眠っているだけなのに。

距離が、遠い。
手を伸ばしてやっと届くのではないだろうか。
その距離が、まるで拒絶されているかのように遠くて。




「………………やばい、行き詰ったなぁ…。」




あの言葉が頭を過って離れなくて、
眠れる事なんて出来なかった。
























言い訳。

ぎゃ…!
1年とか…本当に申し訳ありませんでした…!
全力で頑張っていきます…!




黒田


2007.8.7











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