散歩。 黒田
寒々しい程の青い空。
空気がとても澄んでいて、息を吐くと白い。
こんな日でも、我が上司、ロイ・マスタング大佐と共に
やっと見つけた自由な時間を使って気晴らしに小高い丘まで来た。
というか、”連れて行かされた”に近い。
この時期のここの丘には人はいない。
暫く続く、石畳を歩くロイの後ろをついて行く。
辺りは本当に静かで、二人分の足音しか聞こえない。
でも、もっと耳を澄ませば息すら聞こえるかもしれない。
「前にも、連れてきてもらったな。」
前を歩いていたロイが振り返らずに呟いた。
声の調子から察すると少し楽しそうだ。
それに自分も嬉しくなって、
彼に見えないのを良い事にこっそり笑った。
「えぇ。前は、ここら辺一帯青々としてましたよね、まだ春で。」
今はもう、その名残を無くした木を見上げて言った。
「ん?夏じゃなかったか、前は?」
ふと、歩みを緩めて聞き返してきた。
いや、確かに彼と前にココへ来たのは春だった。
視覚的に覚えている。
「…あ。いや…すまない、春だったな。」
何か思い出したのか、すぐに間違いを謝ってきた。
そして、歩みを元に戻し、雰囲気が変わる。
こういう時は、決まって”あの人”関連なんだ。
やっぱり、彼に見えないのを良い事に、つまらなそうな顔をした。
今見られたら、きっと、
『なんて顔してる』
って言われてしまう程、情けない顔になっているだろう。
でもね、
そうさせてんのは、
あんたなんだっての少しはわかって欲しい。
見えないから伝わらないが。
「…。」
「…。」
さっきの会話から10分は経ったと思う。
石畳ももう終わりが見え始めている。
ねぇ、
今、何考えてる?
煙草では無い白い息を吐きながら、
ロイの背中をじっと見つめる。
仕事のコト?
色々な女のヒトのコト?
それとも…
”あの人”のコト?
”あの人”は昔の人、
今のあんたの恋人は俺のはずで。
石畳が終わり、見事な景色が見えるまで、あと十数歩。
振り返って、くれませんか?
いつも見ている後姿にこう思ったのは、
もう何度目になるのか。
いつもとは違う、祈りにも似た想い。
簡単には、いかないか。
何を期待していたのか、と自分を恥じた。
「…なんて顔、してるんだ。」
驚いて顔を上げた。
冷たい風が軍服の裾を翻して、綺麗な青を広げた。
その青が映える、白い肌に漆黒の髪。
いつもの余裕のある顔ではなく、少しだけ困った表情。
それでも、嘘みたいだけど振り返ってくれた。
「…大佐。」
「ん?」
静かに彼に近付く。
距離をゆっくりと詰める。
彼は驚きも怯えもせず、じっとハボックの目を見つめている。
目の前にいる愛しい恋人の腰に腕をまわし、
自分の方へ引き寄せる。
距離をもっと縮める為に。
「…どうした、急に甘えてきて。」
ハボックの肩に頭を預けてロイが問う。
「…ははっ、どうしたんスかね…寒いから…ですかね…。」
冗談に乗せてしまおうかと思ったが、軽く失敗した。
稚拙な独占欲。
隠そうとしてもこの人にはバレてしまうだろうけど。
「…しょうがないヤツだ…。」
その言葉と同時に唇に温かい感触。
「…”距離”は縮まったか?」
余裕のある顔をしておきながら、少し頬が紅い。
ハボックは、驚いた顔からすぐに甘い顔になって、
今度は自分からロイの唇にキスを贈った。
「もう少し…、もう少し近くに
あんたが欲しいです。」
低く、甘い声で囁く。
ピロートークのように甘い声で。
余裕のある顔から、色香がする顔に変わり、
上目でハボックを見上げる。
そして、彼の首に手を伸ばし、頭を自分の口元まで押した。
「…今日の私は、どうやら甘やかしてやりたいらしい。」
言葉の最後に耳に、ちゅっと音がする。
この人からの誘い。
滅多に無い事で柄にも無く、顔に血が集まっていくのがわかる。
我慢がききそうにもなくなる程、振り回される。
あんなにも不安がっていたのに
たったヒトコトで嬉しくなってしまう単純な自分が
酷く子供だと思った。
この人の前では、どう足掻いても子供になってしまう。
きっと”大人”だったろう、”あの人”には、なれなくて。
「さぁ、帰ろうか、ハボック。」
ここは寒い、と言いながら肩を軽く押す。
放せ、の合図だ。
「はい。」
返事と共に手を緩めて、ロイを開放した。
放されたロイは、ゆったりと来た道への方向へ歩き出した。
そして、振り返らずに呟いた。
「前に来たのは、仕事だったんだ。地理がどうとかで
あの上司の嫌がらせでな。全く、くだらん。」
「…はい。」
自分の声は、驚いた感じだったと思う。
でも、それより、
見透かされていた、
というのと
なんだか少しだけ安心した
というのが大きかった。
この人は、俺のコト、
ちゃんと見ていてくれている。
一応、恋人として。
あぁ、今日はどうやら加減がきかなそうだ。
言い訳。
おぉぉ?
なんか、凄く凄く静かなモノを書きたかったのですが
ワケわからんコトに…。
なんか、ハボロイっていうか、ロイハボ…!?
スミマセ…!
あまったるい、ミルクティみたいな話を書いてみたいモンです。
(ミルクティ飲めませんが/え)
え、
っていういか、もうすでに激甘?
黒田 (旧:神崎 楓)
2003.12.22
(移動:04.10.31)
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