(*「涙の理由」→「哀」の続きです。捏造ありまくりです。*)
接触。 黒田
「…。」
カーテンの隙間から木漏れ日のような温かい光が漏れている。
それを見た時、”朝”が来たという事が解った。
辺りを目だけでぼんやりと見回す。
見た事のある感覚がした。
よく思い出したら、ここは何度か使用した事のある
中央の仮眠室だと気付いた。
ロイの記憶はブロッシュの車の中で終わっているので
彼がここまで運んでくれたのだろう、とまで察した。
『…甘えてしまったな…。』
彼が、あんまりにも
無垢な事を言うから。
久し振りに眠れたのだが
やはり”すっきり”とまではいかなかった。
まだぼんやりとする目を何度もゆったりと瞬かせた。
『このままってのは…無理かなぁ…。』
溜め息を吐いた後に突然扉が開かれた。
「ロイ!」
振り向くと眼鏡に髭の見慣れた人がいた。
「…ヒューズ。」
「何で、お前はいっつもそーなんだ!?」
会った早々、怒鳴るように声を大きくして部屋に入って来た。
「ヒュ、ヒューズ中佐!」
後から、困ったような顔をしたブロッシュとロスも付いて来た。
「早く来る時は連絡しろって、何回言えばわかるんだ!
……ん?」
大きな声が突然止み、ロイの顔をじっと見つめ始めた。
「…ロイ、お前…」
「そろそろ仕事の時間だろう。
支度をするから先に行っててくれないか。」
言葉を遮った。
今の状態を隠す、というより知られるのが嫌だった。
恥ずかしいから、とかそういうのでは無くて
単純に彼に知られたくなかった。
でも、きっと気付いたと思う。
原因は解らないだろうけど。
「…ヒューズ中佐。」
状況をなんとなく把握しているブロッシュがヒューズを促す。
「…。」
不満な顔をしつつ踵を返して部屋を出て行った。
「…じゃあ、マスタング大佐、私達は先に行っておりますので。」
ロスも控えめにそう言って、彼女も部屋を出て行った。
残されたロイは、やっと安心したような息を吐いた。
早く…忘れれば…。
***
中央での仕事はやる気を出せばほんの一週間程で片付くのだが
今のロイにはすっかりやる気は無いので
とろとろと進めていた。
「ローイ。今日はグレイシアがお前の為に
ご馳走を作ってくれるってよ!」
ロイ用に与えられた執務室の扉が開かれ、
出てきたのはこの声とヒューズだった。
「あ…すまないんだが、
今日は来たばかりだから仕事を整頓しておきたいんだ。」
「そんなの後で俺が手伝ってやるって!」
「いや、これは私の仕事だ。
奥さんには悪いんだが…。」
「…しょうがねェなぁ〜、じゃあ、また今度にしよう、な?」
「…あぁ。」
ロイが頷いたのを見て、ヒューズは後頭部を一回掻くと
来た道を戻るように背を向けて歩き出した。
「…なぁ、ロイ。」
ふと足を止めて振り返った。
「…何かあったら、いつでも俺を頼れ。」
いつものふざけているような声では無く、
真面目な声。
彼を好きだった自分を思い出した。
時折見せるこの優しさに惹かれてた。
でも、もう昔の話。
今は、
…今は…
ロイは軽く首を振って考えるのを止めた。
考えては何も始まらない。
そう自分に言い聞かせた。
***
「ねェ、ジャン?」
振り返った女は緩やかに微笑んだ。
似ている。
あの人が時折見せる自然な笑顔に。
しかし、次の瞬間には違うと思い知らされる。
あれも違う、これも違うと何人の女を見た。
だが、やはり違う。
あの人の表情は、一つ一つ何もかも覚えている。
何度も焦がれて、遠くて手が届かなくて
それでも手に入れたと思ったのは幻だった。
もう触れられないあの人を探すように。
***
「大佐の仕事がどれくらいになっているのか、
確かめて来てくれないかしら、ハボック少尉。」
ロイが居ないまま続けられている、いつもの仕事が終わり
帰ろうとしていたハボックを呼び止めたのはホークアイだった。
「…なんで、俺なんスか。大体」
「私はここを出られないし、
大佐はすぐにだらけるから誰かの監視が必要だわ。」
非難の言葉を遮って正当な意見を言われたハボックは黙った。
何よりも黙らずにはいられなかったのは、
ホークアイの”あの”視線。
意思の強い、
それでいて、全てを見透かしてる 瞳。
あの人の近くにいるヒトは似てくるものだろうか。
「…わかりました。
いつですか?」
「明日。」
「明日ぁー!?」
あまりにも唐突で驚いた。
「一刻も早く大佐が帰って来ないと困るのよ。」
「…わかりました。」
溜め息を吐いて了承した。
その様子を見たホークアイはそっと微笑んだ。
「ちゃんと、仕事も終わらせて二人で帰って来て。」
「…わかりました。」
このヒトはやっぱり何でも知ってる。
頷いて、コートを掴んで部屋を出た。
あのヒトは、俺に気が無いのに、どうすりゃいいって言うんだ。
接触まであと19時間。
言い訳。
すみません…!まだ続いております…!
どんどん暗いです…。
っていうか、接触してな…。
黒田 (旧:神崎 楓)
2004.5.11
(移動:04.10.31)
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