それから。 黒田
ちかり
と、一瞬だけ日を反射して光を放つ指輪。
ハボックは、咥えていた煙草を左手に持つ時に
少しだけ見た。
薬指にはめられた銀色の何の飾りの無い指輪。
自分の愛する人との約束。
こんな事をあの人と共有するなんて、
とうとう自分もおかしくなったか、
とも思った。
でも、
必要だった。
これからの未来の為に。
これからの自分と彼の為に。
何が起きても、もう二度と後悔したくはないし、させたくはない。
ふと、先程のエドワードを思い出した。
二人の会話を聞いた時の
あの顔。
今は無言が続いているが、きっと心の中では荒れているだろう。
…知ってたよ、キミがあの人を想っていた事なんて…。
前を歩くその小さな背中に、声には出さず呟いた。
だからと言って、あの人を譲る事なんて出来ない。
もう何年もかけてやっと手に入れたのだから。
汚れた、軍の”狗”として、野望を胸に抱いた彼を
支えたいと思った。
共に叶えたいと思った。
半端な想いじゃないんだ、これは。
お前以上に俺は、あの人を想っているし、愛していると思うよ。
「…なぁ、ハボック少尉。」
「…ん?」
振り返らずに突然話をかけられた。
「…あの人を幸せにしねーと、俺が絶対奪うからな。」
半分涙声だった割には、良く聞こえた。
「それでも、お前には譲らんよ。」
その返事にエドワードは振り返った。
「何だよ、それ。
言っておくけどなぁ、あと何年かしたら
俺、絶対イイ男になるんだ。
そしたら、大佐だって気が変わるかもしれねーぜ?」
涙声だったのに、
顔は晴れやかで悪戯っ子のような笑みを浮かべている。
立ち直りの早いヤツ。
エドワードという子はこんなに強い男だったのだと思った。
「変わるかなぁ。」
「ふん、見てろよ、イイ男になってやっからな!」
「ははっ、楽しみにしてんよ。」
「あ!その余裕の台詞、覚えてろよ〜!」
エドワードは笑いながら
ぼすっとハボックの腕に軽く一発拳をぶつけた。
そして、そのまま手をひらひらと振って
じゃあな、と別れの挨拶を告げた。
「あぁ、何年経ってもロイはやんねーけどね。」
煙草を持ったまま、紫煙をくゆらせて手を振った。
手を振った時、また指輪が
ちかり、と光を放った。
銀色に光るそれに軽いキスをする。
まるで、恋人や家族、とても大事な人にするような
愛しさを籠めたキス。
これ以上無いくらいの、幸せそうな表情で。

言い訳。
「はめられた。」の続きハボック編だったのですが、
やっぱり、それでもエド可哀想ですね…。
なんとか、吹っ切れたエドなんだけども…
その後、ウィンリィの元へ行くなり、アルの元へ行くなり、な感じで。
にしても、ハボック、独占欲の強い男に育ってしまいました…(遠)
いいような、悪いような…。
黒田 (旧:神崎 楓)
2003.12.24
(移動:04.10.31)
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